高尿酸血症

高尿酸血症と動脈硬化について

尿酸は、細胞内の核内の核酸の主成分であるプリン体が代謝されて生じる老廃物です。尿酸の排泄量が低下したり、プリン体を多く含む食事の摂取が多い(もしくは食事量自体が多い)ことにより、血液中の尿酸が過剰になっている状態(尿酸値が7mg/dL以上)を高尿酸血症といいます。
高尿酸血症は、昔から痛風になることは有名で、長期間放置することで腎障害が起きることも明確に分かっていました。しかし、動脈硬化や脳心血管疾患に対するリスクについては、なかなか明確にならなかったこともあり、高尿酸血症に対する理解や、治療の必要性の認識はまだまだ不十分でした。
ところが、この数年間の間に尿酸の血管における作用が分かってきました。尿酸が結果的に活性酸素を増加させることで血管内皮障害につながることに加えて、尿酸が結晶化したもの(痛風の原因となる尿酸の塊)自体が、細胞死に関わる可能性があることも指摘されました。これらの機序が明確になることで、今後さらに尿酸のリスクが正確に評価されるようになってくると思われます。
また、内臓脂肪の蓄積などによりインスリン抵抗性が高まると、糖尿病発症リスクが高まるのですが、インスリン抵抗性が高くなることで尿酸値も上昇することが明らかになっています。つまり、尿酸値が高いということは、インスリン抵抗性が高まっている可能性を示し、インスリン抵抗性が高いことは糖尿病発症リスクが高くなっていることを示します。糖尿病は、動脈硬化の大きなリスクですから、結果的に尿酸値が高いこと自体、既に動脈硬化のリスクが高まってきている可能性があるわけです。

尿酸と痛風について

尿酸が結晶化しやすくなるのが、血中尿酸値7.0mg/dL以上であることが分かっており、この数値が診断のカットオフ値として使用されています。
そして、実際臨床治療の上で最も痛風が起きやすいのが7.0mg/dL台であり、必ずしもずっと高い人が痛風発作を起こすわけではないことが、尿酸に対する治療の認識が十分に浸透しない一つの理由と言えます。
痛風は起こさないものの、血管内皮障害は、尿酸値が高い程悪くなることは明確です。痛風を起こしたことがある人は、その激痛ゆえに、先々の血管障害よりも目先の痛みを繰り返さないことに対して治療する意義が感じられますが、痛風を起こしたことがない人は、痛みがなく無症状ゆえに治療する意義を認識するタイミングがないのです。
また、痛みの症状はないものの、長年尿酸値が高い状態が続くと、痛風結節と言われる尿酸結晶の塊が、皮下などの組織に蓄積することもあります。

尿酸と腎障害について

尿酸結晶は、血管内皮を傷害しますが、その影響を最も受けやすいのが、腎臓です。高血圧や糖尿病と同様で、全身の微小血管が傷害されやすいわけですが、中でも腎臓の血管は微細のため傷害を受けやすく、高尿酸血症による腎障害(痛風腎)は、痛風発作よりも命や生活に直結する大きな病気と言えます。
ただし、痛風腎と呼ばれる腎障害も、早期の内服コントロールにより、最近ではほとんど見られなくなりました。尿酸は長い時間をかけて病気が進行するため、ある程度早い段階で治療が開始できることで、このことを医療者が十分に認識し、患者さんの理解と治療意欲が進むように心がける必要があると思われます。

尿酸の治療について

尿酸の産生を抑制するタイプ、排泄を進めるタイプ、と大きく2種類の内服治療があります。高尿酸血症は、プリン体を含む食品の摂取を制限することで一定の改善効果があります。
しかし、ビールを代表とする醸造酒のアルコールなどはそれだけ制限することで改善効果が得られますが、元々あまりアルコールを摂取しない人においては、レバー、白子、イワシ、鰹節、乾燥椎茸を筆頭として、魚や肉、魚卵、干物などタンパク質や栄養を凝縮したような食事に多く含まれていますので、これらを全て制限することで逆に栄養失調になることのリスクが上回ります。ビールが明らかに多い、という自覚がある方以外は、内服治療を行うことのメリットが大きいかもしれませんので、医師とご相談いただくのが良いと思います。

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