花粉症

当院の花粉症の検査・治療

View39アレルギー検査
(39項目のアレルギー検査)
4000~6000円
舌下免疫療法
(診察料+薬代+調剤料など)
3000~5000円

※いずれも保険診療ですが、初診料や再診料、その他施設毎の施設基準の違い、他に治療中の病気の加算などによって多少の差が生じます。どうぞご理解ください。

花粉症とは

花粉症は、植物の花粉が原因で生じるアレルギー症状のことをいいます。植物の種類により花粉が飛散する時期が異なるため、季節性アレルギーと表現されることもあります。
花粉症の原因となる代表的な植物としては、樹木ではスギ、ヒノキ、シラカバ、ハンノキ、ブナ、コナラ、ケヤキなどがあります。草花では、イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ)、キク科(ブタクサ、ヨモギ)、アサ科(カナムグラ)などがあります。
日本は森林の割合が多い上に、森林におけるスギの割合が多いことで、スギによる花粉症が全体の7割以上を占めていると考えられます。また、スギは花粉量も多く、風によって遠くまで飛散することができることも、スギ花粉症が目立つ理由の一つと考えられます。スギは、2~3月の花粉飛散量が多いことは有名ですが、実際には秋から花粉は作られており、秋の寒暖差でも花粉は一部飛散されます。
そして、スギは戦後の植樹した株が成長し、近年花粉量が増えているため、スギ花粉症の患者さんは年々増加しており、実に国民の4割以上がスギ花粉症を発症している状態にまでなっています。スギは日本の固有種でもあり、まさにスギ花粉症は日本の国民病と言えます。
以下、各花粉の飛散ピーク時期を示した資料ですのでご参照ください。
スギやイネは飛散時期が長いため、これらにアレルギー反応がある場合には、一年のうち大半の時期にアレルギー症状が出る可能性があります。

主な花粉症原因植物の開花期
花粉捕集期間(開花時期)

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花粉症の症状について

主な症状は、アレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、アレルギー性結膜炎(目のかゆみ、涙)ですが、中には鼻炎や結膜炎の症状はあまり出ないものの、アレルギー性気管支炎(のどの違和感、咳、息苦しい感じ)やアレルギー性皮膚炎(肌がかゆい、乾燥する、湿疹がでる)といった、一般的に花粉症の症状としてあまり認識されていない症状を認める人もいます。
一般的な風邪症状と区別するポイントとして、「サラサラの水のような透明の鼻水」「喉が痛いのではなく、かゆい感じ」「これらの症状が1週間以上続くが、発熱はなく、強い倦怠感(だるさ)もない」という点が挙げられますが、中には区別することが難しい場合もあります。
特に、元々アトピー性皮膚炎がある方、皮膚が弱い方は、鼻炎の症状よりも皮膚炎の症状が前面に出て、花粉が原因であることに気づきにくいこともあります。
また、近年では、消化器症状や持続する発熱の原因など全身症状にまで発展することが明らかになっていることも、多彩な症状の原因を鑑別する上では重要なことです。
その他にも、鼻炎のせいで頭痛が生じたり、集中力が低下したり、寝不足になることでさらにこれらの症状が相乗的に増悪することも、日常生活の上で大きな支障となります。花粉症があることは、仕事や勉強の効率を3割以上低下させることが示されているため、「我慢ができるから」と思って治療をしないことが、実は日常生活の質を下げている可能性もあるのです。

なぜ花粉症になるのか

花粉自体が、目や鼻の粘膜に付着することで、粘膜に存在しているリンパ球(白血球の一つ)が花粉を自分にとって害のある異物と認識して、次に花粉が侵入してきた時には撃退できるようにIgE抗体を産生して次回に備えて準備します。その後、再度花粉が粘膜に付着すると、マスト細胞(肥満細動)と結合して待機していたIgE抗体が花粉と結合することで、ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサン、PAFといったケミカルメディエーター(他の細胞に情報を伝達して働きかける物質)を放出します。そのケミカルメディエーターによって、神経が刺激されることでくしゃみがでたり、分泌腺が刺激されることで鼻水が出たり、血管が刺激されることで粘膜がむくみ鼻づまりが生じたりします。
これまで花粉症の症状は全くなかったのに、突然花粉症の症状がでるという現象は、IgE抗体が一定量以上に増えて免疫反応が準備万端の状態になると、一気にマスト細胞からケミカルメディエーターが放出されるようになるためと考えられています。
また、近年は目や鼻の粘膜へ花粉が侵入して起きる免疫反応だけでなく、経皮感作といって、免疫防御機構が低下した皮膚(乾燥やケガで状態がよくない皮膚やアトピー性皮膚炎など皮膚本来の免疫防御が低下している状態の皮膚)から、直接花粉が侵入することも花粉症の発症に大きく影響していると考えられています。
さらに、同じ花粉の飛散量でも都会の方が花粉症有病率は圧倒的高いことから、花粉だけがアレルギーの原因になっているというよりは、花粉と排気ガスなどのダストが結合した物質に対するアレルギーの可能性が高いと考えられています。

花粉症の検査

花粉症の検査は、血液検査で花粉それぞれに作られているIgE抗体を測定することで確定診断をすることができます。しかし、花粉はそれぞれ飛散時期がある程度は決まっているため、症状が出現する時期によって、何が原因で起きているのか予想することは可能ですし、治療自体は大きく変わりがないため、必ずしも原因になっている花粉の種類を特定する必要はありません。
では、どういうときに検査をした方がよいかというと、治療が難渋する場合やこれまでと違う時期や状況で症状が出てきた場合などです。また、必ずしも検査をする必要はないと言いましたが、治療をする立場からすると、何にアレルギーがあるか、もしくはないか、ということを明確に把握することで、症状の出現時期より早いタイミングで治療を開始することができたり(これは非常に重要です)、最適な治療強度を選択することができたり(アレルギー反応が強いほど治療が難渋することが多いので、あらかじめ治療強度を強化して対応できる等)しますので、治療の経過によっては検査をおすすめさせていただくこともあります。

花粉症の治療

1)抗ヒスタミン薬

一番最初に行う治療は、抗ヒスタミン薬という薬を内服する治療です。前述した通りヒスタミンが分泌されることでいわゆるアレルギー症状が引き起こされており、ヒスタミンで各細胞が反応しない状況を作ることで症状が出にくい状態を作ることができます。ヒスタミンが関与するアレルギー症状は、アレルギー全体の7割を占めているといわれていますので、ヒスタミンをブロックすることで、アレルギー症状のほとんどを抑えることが可能だからです。

2)その他のケミカルメディエーターに関与する内服薬

ただし、それでも治療が不十分な場合は、抗ロイコトリエン薬や抗トロンボキサン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬などを併せて使用します。ただし、これらの薬は単独では効果が弱く、またそれぞれ受容体が分布している部位に多少の特長がありますので、症状によって使い分けます。

3)舌下免疫療法

これらの内服治療による症状抑制は、あくまでも対処療法ですので、対処療法だけでは効果が不十分な場合や、根本的に花粉症をなくしたい、軽くしたいという場合には、舌下免疫療法という花粉と同じ物質を少量ずつ体内に入れることで減感作療法(異物と認識しないように、少しずつ慣らしていく治療)を行う治療も、現在積極的におすすめできる治療です。(以下に別途記載)

4)抗IgEモノクローナル抗体:オマリズマブ

それでも効果が不十分な場合には、オマリズマブ(ヒト化抗IgEモノクローナル抗体)皮下注射が、近年重篤な季節性アレルギー性鼻炎にも適応されることが認められました。しかしながら、かなり高額であること、副作用が強いこと、それでいてあくまでも対処療法のため永続的な治療が必要であることから、現時点では容易に使用するべき薬ではありません。しかしながら、あらゆる治療でも改善が乏しく、日常生活に著しく影響を及ぼすほどの花粉症の場合にはオマリズマブを選択することができるようになったことは、花粉症で日常生活が送れない程困っている方にとって、救世主となりえる可能性があることは確かです。

5)その他の治療

その他には、鼻粘膜をレーザー照射する治療も保険適応で認可されています。根本的な治療ではありませんが、一時的にどうしても症状を抑制したい場合には一定の効果が期待できます。しかしながら、個人差が大きいこと、1回で完結しない場合があること、目を含めて鼻以外の症状に効果がないことなど、の注意点もありますので、他の治療と組み合わせたり、タイミングをみてうまく併用するのがよいと思われます。
他には、一時的にステロイド注射を行っている医療機関もありますが、ステロイド投与は医学的には命に関わるような状態で使用することが多く、副作用を十分理解しない上で安易に行う治療ではありませんので、当院では営利目的ではなく安全性を重視して施行しておりません。どうぞご理解ください。

舌下免疫療法

抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン、抗トロンボキサンA2などの薬は、ヒスタミンなどのアレルギー反応に関係する物質をブロックすることで、アレルギー反応を起こしにくくする対処療法的な治療ですが、他にアレルギー自体を根本的に改善させる方法として、舌下免疫療法という治療があります。
アレルギーの原因となる物質を少量ずつ体内に入れることで、体がアレルギー原因物質自体に慣れていくことを減感作といいます。この減感作を継続的に続けることによりアレルギー反応自体を起こさないようにする治療が、舌下免疫療法です。(舌の下で薬を溶かして内服するので、舌下免疫療法といいます。)
現在、スギ花粉アレルギーに対するシダキュア、ダニアレルギーに対するミティキュアの2種類があります。
いずれも少量のアレルギー原因物質を毎日舌下(舌の下で溶かす)で内服します。最低3年、できれば5年継続してアレルギーをなくすに近い状態にさせます。効果はほぼ一生続く方もいらっしゃれば、10年くらいで少しずつ症状が戻ってくる方もいらっしゃいます。それでも、治療前よりははるかに良い状態が維持できます。
3〜5年と聞くと、すごく長いと感じられると思いますが、治療を行なった方のほぼ全員が治療前よりも症状が毎年確実に緩和されていくことを実感することで、「最後までしっかりやりたいです。」「5年経つけど、治療が終了したらこんなに調子がいい状態が終わるかもしれない不安があるので、もう少し続けていたいくらいです。」とおっしゃいます。
治療開始後1ヶ月以内は副反応として、口腔内の違和感などの症状が出る方もいらっしゃいますが、ほとんどの方は数ヶ月以内に副反応もなくなり、問題なく治療を継続することができます。
シダキュアに関しては、スギ花粉のピーク時に開始すると副反応が強くなりますので、12月〜4月の間は新規に開始することは避けるべきとされています。
一方、ミティキュアはダニの繁殖に大きなピークがないため、通年的に開始することが可能です。
ただし、妊娠希望がある方においては、妊娠/出産の際には中止する必要があり、継続年数が3年未満の場合は、再発リスクが高くなるため、再度やり直す必要がありますので、開始するタイミングを考える必要があります。

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