心不全

心不全とは?

心不全とは、全身をめぐる血液循環が何らかの原因で悪くなり、血液の流れが停滞する状態のことを言います。血液の流れが停滞すると、血液中の赤血球が酸素を運んでいますので、全身に酸素を供給することができなくなります。酸素が供給できないと、全身の細胞は酸素を栄養源として生きて活動しるため、細胞が死ぬ、もしくは活動が弱まってしまいます。
急激に血液の流れが停滞してしまう状態のことを急性心不全といい、血液の流れは悪いながらも一応滞りなく流れている状態を慢性心不全といいます。 原因はさまざまで、心臓、腎臓、肺、肝臓、高血圧、ホルモン、貧血(赤血球の減少)、低栄養、感染症等、本当に様々です。
中でも、心臓が原因で心不全がおきる疾患としては、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎、心膜炎が挙げられます。

虚血性心疾患について
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心臓弁膜症とは?

心臓弁膜症とは、心臓の中にある逆流防止弁が何らかの原因で不具合が生じる病気です。本来一方向性に流れる血液が、心臓の中で一部逆流するようになることで血液循環が停滞しやすくなります。また弁が十分に開かなくなると、血液が出にくくなります。
弁が硬くなって扉の開きが悪い状態を狭窄症といい、扉が閉まりが悪くなって常に隙間風が吹いている状態を閉鎖不全(逆流症)といいます。心臓には4つの弁がありますので、それぞれを組み合わせて、僧帽弁狭窄/閉鎖不全、大動脈弁狭窄/閉鎖不全、三尖弁狭窄/閉鎖不全、肺動脈弁狭窄/閉鎖不全という呼び方になります。

心筋症とは?

心筋症とは、心臓は筋肉の塊でできていますが、その筋肉組織に一部もしくは全体に変性(正常の細胞ではなくなってしまう変化)が生じる病気です。正常の細胞でなくなってしまうことで、心臓がポンプとして力強い動きができなくなったり、しなやかな動きができなくなったりして、血液循環が停滞しやすくなります。
さらに原因や病態によって、肥大型心筋症、拡張型心筋症、高血圧性心疾患、虚血性心筋症、その他心筋症(アミロイドーシス、ファブリー病、サルコイドーシスなど)といった疾患に分類されます。最も頻度が多いのは高血圧性心疾患と虚血性心筋症です。高血圧性心疾患は名前の通り、元々はただ高血圧があるだけだった人でも、血圧の管理が悪い状態が長年続くことで、誰でもなり得る病態です。(むしろコントロールが悪い人は既にこの病態になっていることを念頭に管理する必要があります。)
虚血性心筋症は、心筋梗塞により心筋細胞の一部が壊死してしまい、全体的な新機能が低下する病態です。その他の心筋症は、原因不明(なんらかの遺伝子変異であったり環境因子が影響している)もしくは特定の遺伝子疾患として病態が解明されつつあるものもありますが、いずれも頻度が多いわけではありません。ただし、心筋症を疑った場合には、これら全ての疾患をしっかり鑑別して評価をしておく必要があります。

どんな症状が出ますか?

血液量が増えて停滞するタイプと、血液量が増えずに停滞するタイプ、また両者が混在するタイプがあります。血液量が増えるタイプの心不全では、典型的には、足がむくむようになり、体重が増えた後、平地歩行でも息切れがでるようになり、最終的には横になると息苦しくて眠れなくなります。血漿量が増えないタイプの心不全では、ストレスで血圧が急上昇したり、心筋梗塞など急な心臓のダメージを血液循環が突然停滞するようなことをきっかけに起きることがあります。

検査、治療について

検査

心電図、採血検査、レントゲン、心エコー検査(経食道エコー検査も含む)、心臓MRI検査、心臓カテーテル検査を行います。これらの検査で、心臓の状態、構造的な評価を行います。

治療

治療は、内服や注射治療が基本ですが、心臓弁膜症に関しては構造的な不具合が原因であることが多いので、最終的には手術が必要となります。その場合は、開胸手術により壊れた弁膜を修復する治療が基本ですが、最近ではカテーテルによりより低侵襲でこれらの手術をうけることができます。大動脈弁、僧帽弁については、現時点では非常に限られた施設ではありますが、今後さらに発展していく分野だと期待されています。
また重症な心不全では、心臓両室ペーシング治療、補助人工心臓、心臓移植などの治療があります。
軽症な場合は、専門的なクリニックであれば十分治療継続が可能ですが、重症な場合は、一度大きな病院での綿密な病態評価と厳格な治療方針を立てる必要があります。
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